コラム(所有者不明土地の解消)

所有者不明土地の発生予防と土地利用の円滑化の両面から、民事基本法制の総合的な見直しが行われています。詳しい内容は法務局のホームページでご確認頂きたいですが、簡単なポイントのみ記載させて頂きます。

■登記がされるようにするための不動産登記制度の見直し

※相続登記の申請の義務化


 相続が発生しても相続登記がされないことが多いので、相続登記の申請を義務化することで、所有者不明土地の発生を予防する。

【内容】
 相続人は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。→令和641日施行
令和641日より前に相続した場合→令和9331日までに相続登記申請

 ※所有不動産記録証明制度


 親の不動産がどこにあるか分からず相続登記がすすまないので、法務局でリストを作成してもらい、相続登記をうながす。

【内容】
 登記官において、特定の被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が設けられる。→令和822日施行予定

※住所等の変更登記の申請の義務化


 登記簿上の所有者の住所が変更されないことも所有者不明土地の主要な発生要因となっていることから、住所等の変更登記の申請を義務化するとともに、登記官が職権で住所等の変更登記を行う仕組みも設けられました。

【内容】
 登記簿上の所有者については、その住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければならないこととされました。→令和841日施行予定


以上が、主な「所有者不明土地」を無くすための法律の改正や登記制度の見直しです。心当たりのある方は、お子様に「負動産」を残さないためにも(あなたが手続きしなければ相続したお子様は、ますます面倒な手続きが必要となります)、出来ることから少しずつやっていきましょう。

少し長いコラム(もはやコラムとは言えませんが……)となりましたが、今年1年間ありがとうございます。

今後とも変わりませず皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

皆様のご多幸を心よりお祈りいたします。

相談事例(スムースな相続登記)

相談者:相続人

相談内容

父親が亡くなって20年以上経っている。相談者は、各地を転勤で転々としたが、東京に中古マンションを買い、母親と二人暮らし(相談者年金暮らし。

子供は別のところにそれぞれ居住)。自分の他に、姉と妹がいる。姉も妹も県外に嫁いでいて、家族で育った実家(父親が亡くなってから、ずっと空家で築60年経過)を処分したいと相談有り。

この場合、相続人は亡くなっている父親の妻(相談者の母親)と相談者、姉、妹の4人となります。

早速、謄本を取り、現在の所有者を確認します。登記簿謄本を確認して分かったのですが、土地、建物共かなり前に姉に相続されており、その後相談者に贈与されていました。

本来ですと、非常に段取り良くスグ売買できる状況です。現地を確認しますと、建物は1棟ですが、何度か増築されているようです。

そこで、固定資産税をいくら払っているかの納税通知書を見せて頂きました。すると、土地は1筆ですが、建物が2棟建っていることになっていました(外観からだと1棟の建物ですが、税金上は2棟別々の建物となっています)

法務局にも「この地番上に登記された建物は何棟ありますか?家屋番号は何番ですか?」と電話確認しました。法務局は、電話でその土地に登記されている建物が何棟あるか?また家屋番号は何番か等、親切に教えてくれます。

漏れていた1棟の建物謄本を取ると、亡くなった父親名義のままです。相談者に相続登記をしてもらわなければなりませんが、そのためには、母親、姉、妹の3名の「相続放棄」が必要です。

母親と姉は問題ないのですが、その時初めて、妹さんは亡くなっておられることを知りました。妹さんには子供が二人います(甥二人が相続人となります)

相談者と甥二人は、何かの親族行事の時、また特段の用が無くても祖母のご機嫌伺いに来るような間柄でしたのでスムースに「相続放棄」をして頂きました。通常、これらのことは、司法書士に依頼します。

売却も何とか出来ました。相談者が相続した「不動産」は価値のない負の遺産、いわゆる「負動産」でしたが、少なくとも相談者は今後この「負動産」の管理で頭を悩ませることは無くなりました。

ポイント

これが「負動産」ではなく、ある程度価値のある「不動産」であっても、結果は同じくスムースに全員が「相続放棄」をしてくれたと思います。皆さんも自分自身に置き換えて考えてみてください。

相続人に兄弟姉妹がいる可能性は非常に高いです。普段から兄弟姉妹が仲が良ければ、その子供達もたいていは、仲が良いものです。

両親が、「兄弟、仲良くしなさい」と言うのは、案外こういう時のためかもしれません。私も、二人の愚息に「兄弟、仲良くせぇよ」というのは今更ですので、「老後の面倒は二人でみてくれよ。

長男も次男もない。近い、遠いも無いだで」と、仲良くを二人でに置き換えて言っています。相続人か被相続人にいつ誰がなるかは、分かりません。

家族親族が仲良くしておいて何かが損になる可能性は、何も無いと思います。仲が悪ければ、「相続」ではなく、「争族」になる可能性はあります。

弊社年末年始の休業期間

平素は格別のご愛顧を賜りまして誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、年末年始休業期間を下記の通りとさせていただきます。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

令和6年12月28日(土)~令和7年1月5日(日)

相談事例(最強の事前対策Ⅱ)

年明けの日本を襲ったニュースに悲しみや無力感を覚えたのは、私だけではないと思います。被害にあわれた方々が1日も早く日常を取り戻されることを願うばかりです。

さて、新年のスタートの相続事前対策はまたまた大袈裟に最強と前置きしています。先回の『最強の事前対策』とは全く違う切り口での話を今回は記載させて頂きます。また特定の相談者から何か相談を受けての回答ではありません。

私と懇意にしている知り合い(同じように相続相談をメインにされている方で仮にAさんとします)と色々と話をしている時、何かのはずみで出てきた話です。よく「自分は何も相続していない。土地も家(実家)も長男が相続し、現金の類はほとんど無かった」というような話をされる方がおられます。

特に田舎になれば、逆に相続したくない不動産を相続しなければならないというようなこともあるでしょう。テレビドラマのように何億もの遺産をめぐる骨肉の争いというのは山陰地方ではほとんど無いかもしれません。

しかし、大部分の方が言われる「ほとんど何も相続していない(貰っていない)。貰ったのは、ほんのわずかのものだった」と言うのは本当でしょうか?というような話にAさんとなりました。ここでいう相続する物とは、不動産・預金・株式等のお金に換えることが出来るものあるいは、お金そのものです。

「子孫に美田を遺さず」ということばがあります。美田は、その人の置かれている立場によって意味が全然変わってきますが、ここでは一般的なお金及びお金に換えることができるものとします。

この美田は私も遺そうとは思いません(遺せる美田もありません)。Aさんも同じ考えでした。自分自身を振り返った時、確かに亡くなった父親から「美田」をもらったとは相続時思いませんでした。

しかし、前期高齢者となった今、色々考えると父親からお金や不動産以上のものを相続(どちらかというと生前贈与)して貰ったような気がします。子は親の背中を見て育つと言われます。親から色々なものを貰いました。

一番は自分に対する愛情、そして躾、行動・考え方などです。私は転勤も20年以上しましたが、子供の頃は勿論、勤務してからも割と長く親と同居していました。その何十年もの時間から色んなものを相続していたのです。

具体的な事は省きますが、これが私が皆様にお勧めしている『口頭遺言』に繋がっているのだと感じます。『口頭遺言』はどちらかというと「美田」をこうしてくれという話です。

「美田」以外の目に見えない貴重なことを子供達(相続人)に遺してほしいと思います。法的には書面ですが、こころの遺言はやはり口頭だと思います。親は子供達にいろんな話をしてください。

子供達は親から色んな話を聴いてください。以前も書きましたが、改まった感じでなくても、酒の席でも良いと思います。昔話でもなんでも良いです。それはこうした方が良いと思うよでも良いです。

親が子供達のことをどれほど想っているか。「美田」より余程価値のある人間の「生き方」を、親が子供達に教えるのがこころの相続だと思います。

「美田」は使えば無くなりますが、この相続した「生き方」は永久に無くなりません。

コラム(相続登記の義務化)

本年41日から「相続登記が義務化」されます。相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加しています。その面積は九州を上回る広さと言われています。

このことが、周辺の環境悪化や公共工事の阻害などの社会問題になっています。令和641日以前に相続した不動産も相続登記義務化の対象になります(この場合の期限は、令和9331日です)

対応としては、相続人の間で早めに遺産分割の話合いを行い、不動産を取得した場合には、その結果に基づいて法務局に相続登記をする必要があります(ほとんどの場合、司法書士に登記依頼をします)。また、相続を知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。

相続でのもめ事は誰しも望みません。スムーズな相続のため親としてすべき重要な事が何点かありますが、一番は何といっても『遺言書の作成』です。遺言書で財産の分配方法を決めておけば、相続登記はすぐにできます。

正当な理由なく相続登記の申請をしなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記の義務化が、腰が重い我々の『遺言書の作成』の後押しとなる事を願っております。

コラム(成年後見制度)

以前のコラムにも記載しましたが、成年後見制度は、使わなくて済むなら使わない方が良い制度です。

他人が親(一般的には)の財産管理をし、親のために良かれと思い売却したい不動産も中々自由にできない。親のために使う現預金も同じく自由にできない。不動産売却もどうにかこうにか売却でき問題が片付いても、その後も成年後見人に報酬を払い続けなければならない。

成年後見は以前の禁治産者制度の名前が変わっただけという感じですので、判断能力が無くなった人を保護してあげるという考え方は同じです。ただ、結局は他人が本人に代わり意思決定をするということですから十分な慎重さが求められます。

成年後見も本人の意思を可能な限り探るという制度改革が必要です。今春から法改正の議論が始まります。後見を終わらせる。それ以前に後見を始めない。後見人は必要な事だけを個別に行う。

早ければ2026年には法改正が行われます。それまでに被後見人を支援する地域福祉の支援チームが必要です。このチーム作りこそが、4人に1人が75歳以上の人生100年時代の現代を最後まで自分らしく生きる枠組み作りだと思います。

相談事例(最強の事前対策)

相談者:将来の被相続人及び将来の相続人

相談内容

今回の相談事例は『最強の事前対策』です。そもそもここに綴っている様々な事例は、相続が起こった後にこのようにしました。という内容の事例がたくさんあります。今後も、相続後の事例をたくさん載せたいとは思います。しかし本来は相続が起こる前の『事前対策』が大切なはずです。しかし、私に相談に来られるときには既に相続が終わっている場合がほとんどです。従って、相続事後対策が圧倒的に多くなります。事前対策は(事後対策も)、それぞれの相続内容も様々ですので、一律にこれが『最強の事前対策』などというものはありません。それなのに大袈裟に『最強の事前対策』となっている対策を私なりに考えてみました。

相談者が被相続人でも相続人でもありません。将来の被相続人及び将来の相続人となっています。つまり、現在は存命ということです。将来の被相続人(例えばこの場合父親とします)。相続人は配偶者(同居)と二人の子供夫婦(別居)とします。まずは自分(父親)が亡く

なった時、相続財産をどうしたいかを配偶者と二人の子供夫婦(夫婦一緒の時)に何度も話をする。「自分は、この家はこうしたい。田畑はこうしたい。預貯金はこうしてくれ」というような話です。また子供夫婦は、「おやじ、申し訳ないが親父が死んでもこの家には住まないよ。どうするかは何とか考えるは。売れるものなら売るよ」などとなるでしょうか。

またアパート等の不動産がある場合は、例えば一方の子供夫婦が「自分はアパートが欲しい」というかもしれません。それに対してもう一方の子供夫婦はどう考えているかも話し合うのは当然です。被相続人の希望も相続人の希望も全てかなうのが理想ですが、それは無理です。100%は無理ですが、自分の希望に極力近付ける。そのためには主張するのは大切ですが、譲るべきは譲るのも必要です。但し、相続人より被相続人の想いを優先させるのは当然です。被相続人の財産をどうするかの話ですので、被相続人の想いを一番大切にします。

ポイント

あくまで『円満相続』で、決して『争族』にはしない。被相続人が話をリードして自分の思い通りにしようと思えば、ある程度若くて元気なうちから相続の話をしておくべきです。

  • 相続の話をする回数は、多ければ多いほど良い→子供達も相続の話に慣れてくる。
  • 自分の気持ちを素直に伝える→親父は、そういう考えかということが分かる。
  • 何故そう思うかも必ず伝える→子供の思いは当初違っていても、親父がそう思うならということもある(想いを知っていれば防げた『争族』もある)
  • 無理強いはしない→想いを伝えるだけ伝えたら後は相続人の判断に任せる。

以上、被相続人と相続人が常日頃から、『自分が亡くなったらこうして欲しい』という相続の話を数多くすることが、相続で問題を出さない『最強の事前対策』だと私は考えます。

 

次回より、また多くの事例掲載を予定しておりますので、引き続き宜しくお願い致します。

相談事例(事前対策・成年後見制度)

相談者:将来の相続人

相談内容

将来の相続人(被相続人の実の娘)の長男夫婦がアパート暮らしなので、被相続人(相続人の母親)名義の敷地に家を建てさせたいとのこと。被相続人(現在はご存命ですが、以降の表記も被相続人とだけさせて頂きます)名義の敷地は300坪位あり、そこに30年位前に建てた自宅があります。自宅で母親(被相続人)、本人(相続人)、長男夫婦、長女と5人で暮らしていました。長男夫婦と長女は自宅を出て、アパート住まいを始めました。母親も要介護度が進み施設に入りました。その後、認知症と診断され、弁護士が成年後見人となりました。

ここまでの話は非常に一般的な話です。問題はこの認知症の祖母名義の土地に孫夫婦(被相続人からみて)が家を建てるということが、中々労力のいる話となりました。相続人から見ての長男夫婦(被相続人の孫夫婦)が家を建てるということに係わる人たちの思いが様々だからです。母親は、ずっと自分が被相続人の面倒を一人で見てきた。長男夫婦が同じ敷地内に住んでくれれば安心である。長男夫婦もこの場所で土地から購入すれば、相当な金額になる。それがタダでもらえるのであれば、万々歳(母親が同一敷地内にいるということをどう思うかは別にして)。長女は、実家には不動産しか財産は無いと思われるので、自分が相続人になった時には長男夫婦がほとんどの財産(不動産)を長男のものにしていて、自分の取り分が無くなるのではないか?等、それぞれに色々な思いがありました。被相続人だけは、何も思っていません。イヤ、思えません(認知症ですから)。いよいよ長男夫婦が家を建てるとなった時、後見人の弁護士に被相続人名義の土地に建てますという話をしました。弁護士の回答は、土地を貸せることもできません。どうしてもそこに建てるなら買って下さい。結局、建物が建つ最小の面積で分筆してその部分を長男夫婦が購入し、新築をして住まわれておられます。長男夫婦も母親も、まさか弁護士に被相続人の土地を買えと言われるとは思わなかったとのことです。成年後見人が選任された時点から結論は見えていました。認知症とはそういうことなんだということを改めて思い知らされました。

ポイント

被相続人になるであろう方はご存命です。かつ認知症のために後見人がつています。そのため、話がごちゃごちゃで分かり難いと思います。申し訳ございません。

成年後見人は、被後見人の利益を守るのが一番の仕事です。従って、家族といえども無償で被後見人の財産(この場合土地)を譲ることはできません。将来、被相続人が実家に帰る可能性もゼロではありません。認知症になった時点でどうすることも出来ませんが、『家族信託』を使って、被相続人を委託者、相続人を受託者としていれば、被相続人の土地を購入しなくても借地等の方法があったということです。但し、全てのケースで『家族信託』を推奨するものではありません。繰り返しになりますが、認知症になる前で無ければできない方法ですので、認知症になったあとは、成年後見人というのが、現実的なところです。

コラム(相続時精算課税制度)

コラム(暦年贈与)と同じ生前贈与の方法に相続時精算課税制度があります。贈与を受ける人が届出をすると、以降累計2,500万円までは贈与が非課税となります。

贈与した方が亡くなった時は、贈与した財産を相続財産に加えて相続税が計算されます。ただ一度この制度を選ぶと暦年贈与に変更できない点や、結局は贈与財産は全て相続財産に加算されるため、利用する方は少ない様です。

しかし、20241月以降は、相続時精算課税制度選択後も年間110万円までは贈与税非課税かつ相続時に贈与財産に加算されることもなくなります。相続税対策として期待されます。

但し、暦年贈与と相続時精算課税制度等の生前贈与制度は、どのように利用するかは自己判断ではなく、やはり税理士等の専門家と相談してきめることをお勧めします。