相談事例(最強の事前対策Ⅱ)

年明けの日本を襲ったニュースに悲しみや無力感を覚えたのは、私だけではないと思います。被害にあわれた方々が1日も早く日常を取り戻されることを願うばかりです。

さて、新年のスタートの相続事前対策はまたまた大袈裟に最強と前置きしています。先回の『最強の事前対策』とは全く違う切り口での話を今回は記載させて頂きます。また特定の相談者から何か相談を受けての回答ではありません。

私と懇意にしている知り合い(同じように相続相談をメインにされている方で仮にAさんとします)と色々と話をしている時、何かのはずみで出てきた話です。よく「自分は何も相続していない。土地も家(実家)も長男が相続し、現金の類はほとんど無かった」というような話をされる方がおられます。

特に田舎になれば、逆に相続したくない不動産を相続しなければならないというようなこともあるでしょう。テレビドラマのように何億もの遺産をめぐる骨肉の争いというのは山陰地方ではほとんど無いかもしれません。

しかし、大部分の方が言われる「ほとんど何も相続していない(貰っていない)。貰ったのは、ほんのわずかのものだった」と言うのは本当でしょうか?というような話にAさんとなりました。ここでいう相続する物とは、不動産・預金・株式等のお金に換えることが出来るものあるいは、お金そのものです。

「子孫に美田を遺さず」ということばがあります。美田は、その人の置かれている立場によって意味が全然変わってきますが、ここでは一般的なお金及びお金に換えることができるものとします。

この美田は私も遺そうとは思いません(遺せる美田もありません)。Aさんも同じ考えでした。自分自身を振り返った時、確かに亡くなった父親から「美田」をもらったとは相続時思いませんでした。

しかし、前期高齢者となった今、色々考えると父親からお金や不動産以上のものを相続(どちらかというと生前贈与)して貰ったような気がします。子は親の背中を見て育つと言われます。親から色々なものを貰いました。

一番は自分に対する愛情、そして躾、行動・考え方などです。私は転勤も20年以上しましたが、子供の頃は勿論、勤務してからも割と長く親と同居していました。その何十年もの時間から色んなものを相続していたのです。

具体的な事は省きますが、これが私が皆様にお勧めしている『口頭遺言』に繋がっているのだと感じます。『口頭遺言』はどちらかというと「美田」をこうしてくれという話です。

「美田」以外の目に見えない貴重なことを子供達(相続人)に遺してほしいと思います。法的には書面ですが、こころの遺言はやはり口頭だと思います。親は子供達にいろんな話をしてください。

子供達は親から色んな話を聴いてください。以前も書きましたが、改まった感じでなくても、酒の席でも良いと思います。昔話でもなんでも良いです。それはこうした方が良いと思うよでも良いです。

親が子供達のことをどれほど想っているか。「美田」より余程価値のある人間の「生き方」を、親が子供達に教えるのがこころの相続だと思います。

「美田」は使えば無くなりますが、この相続した「生き方」は永久に無くなりません。

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