相談事例(事前対策・成年後見制度)

相談者:将来の相続人

相談内容

将来の相続人(被相続人の実の娘)の長男夫婦がアパート暮らしなので、被相続人(相続人の母親)名義の敷地に家を建てさせたいとのこと。被相続人(現在はご存命ですが、以降の表記も被相続人とだけさせて頂きます)名義の敷地は300坪位あり、そこに30年位前に建てた自宅があります。自宅で母親(被相続人)、本人(相続人)、長男夫婦、長女と5人で暮らしていました。長男夫婦と長女は自宅を出て、アパート住まいを始めました。母親も要介護度が進み施設に入りました。その後、認知症と診断され、弁護士が成年後見人となりました。

ここまでの話は非常に一般的な話です。問題はこの認知症の祖母名義の土地に孫夫婦(被相続人からみて)が家を建てるということが、中々労力のいる話となりました。相続人から見ての長男夫婦(被相続人の孫夫婦)が家を建てるということに係わる人たちの思いが様々だからです。母親は、ずっと自分が被相続人の面倒を一人で見てきた。長男夫婦が同じ敷地内に住んでくれれば安心である。長男夫婦もこの場所で土地から購入すれば、相当な金額になる。それがタダでもらえるのであれば、万々歳(母親が同一敷地内にいるということをどう思うかは別にして)。長女は、実家には不動産しか財産は無いと思われるので、自分が相続人になった時には長男夫婦がほとんどの財産(不動産)を長男のものにしていて、自分の取り分が無くなるのではないか?等、それぞれに色々な思いがありました。被相続人だけは、何も思っていません。イヤ、思えません(認知症ですから)。いよいよ長男夫婦が家を建てるとなった時、後見人の弁護士に被相続人名義の土地に建てますという話をしました。弁護士の回答は、土地を貸せることもできません。どうしてもそこに建てるなら買って下さい。結局、建物が建つ最小の面積で分筆してその部分を長男夫婦が購入し、新築をして住まわれておられます。長男夫婦も母親も、まさか弁護士に被相続人の土地を買えと言われるとは思わなかったとのことです。成年後見人が選任された時点から結論は見えていました。認知症とはそういうことなんだということを改めて思い知らされました。

ポイント

被相続人になるであろう方はご存命です。かつ認知症のために後見人がつています。そのため、話がごちゃごちゃで分かり難いと思います。申し訳ございません。

成年後見人は、被後見人の利益を守るのが一番の仕事です。従って、家族といえども無償で被後見人の財産(この場合土地)を譲ることはできません。将来、被相続人が実家に帰る可能性もゼロではありません。認知症になった時点でどうすることも出来ませんが、『家族信託』を使って、被相続人を委託者、相続人を受託者としていれば、被相続人の土地を購入しなくても借地等の方法があったということです。但し、全てのケースで『家族信託』を推奨するものではありません。繰り返しになりますが、認知症になる前で無ければできない方法ですので、認知症になったあとは、成年後見人というのが、現実的なところです。

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